
適応障害で仕事を休職している方にとって、職場への復帰はとても大きなハードルに思えるのではないでしょうか。
いつまでも休職しているわけにもいかないし、自分的には「そろそろ働けそうかな?」と上向きに考えられたとしても、こころの中には「復職して迷惑だと思われたらどうしよう…」という不安もあるかもしれませんね。
ただ、そもそも「職場の迷惑」って何でしょう?漠然と考えていると不安ばかりが募るので、今回は元患者が思う「迷惑の基準」を書いてみようと思います。
復職後に「迷惑だ」と思われそうなポイント
復職「される側」の立場から考えたとき、どんな言動が「迷惑だ」と思われてしまうのでしょうか。
「配慮してもらって当たり前」という態度
これはシンプルにむかつくタイプですね(笑)。休職うんぬんではなく、普通に迷惑。
まぁ、適応障害は真面目にやりすぎて限界がきて発症することも多いので、復職後に横柄な態度をとる方は少数派ではないかと個人的に思いますが…。
企業で労務管理をする方が専門家に相談する質問のなかに、「復職した社員が横柄」「仕事をえり好みしすぎて困っている」というものを見つけました。
実際のところ、いきなり今までと同じようには働けないので、ある程度の配慮は必要です。私自身も結構配慮してもらった上で復職しました。
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ただ、適応障害であることを盾にして職場を思い通りにしようと企む患者さんもゼロではないようで…。それはまずいですよね。
ほとんどの方は大丈夫だと思いますが、「復職を機に今まで言えなかったことを言ってやろう!」とは考えない方が無難です。
過剰に気を遣う(遣われる)環境
メンタル疾患から復帰すると、自分も周りもお互いにめちゃくちゃ気を遣います。
復職した方からすると…
- 長く休んでしまって、どう思われているんだろう…
- 「お荷物だ」と思われているんじゃないだろうか?
- せめてできることは全力でやらないと!
などなど。正直出勤するだけでも100点なのに、あらぬことを心配してしまい、過剰に縮こまってしまう方も多いのではないでしょうか。
特に復帰して1ヶ月程度は、出勤したものの、周りとなかなかコミュニケーションが取れず、地獄のような時間を過ごすこともあるでしょう。

一方で、復職した人を迎え入れる方も、いろいろと思うところはあるようで。
- ヘタなこと頼んで、また具合悪くされちゃったらどうしよう…
- 自分たちのせいでメンタルやられちゃったってこと…?
- フォローの仕方の正解が分からないから、しばらく様子を見るか…
迎える方も大変です。正直やりにくいと思われても仕方ありません。
またメンタルを傷つけてしまうと、自分たちもまた業務を肩代わりする羽目になりますし、言ってみれば「自分が加害者になり得るかもしれない」という状況は気を遣いますよね。

そして、お互い余計な気を回すので「何か疲れた…」という心境になるため、なかには「迷惑だ」と感じる同僚も出てくるかもしれません。
「迷惑の基準」は人それぞれ
職場の人間関係は、毎日一緒にいるので一見深いようですが、実際にはお互いのプライベートの事情はほとんど知らないことも多く、思った以上に浅いものです。
誰がどんな基準で物事を見ているかなんて分からないし、そこまで知る必要があるとは思えません。

自分のことすら病気にならないと分からないのに、他人のことまで知ろう・理解しようと思うのは無理じゃないかな?
職場は仕事さえできれば、会社の不利益になることをせず一定の成果が出せればOKな場所です。お互い気を遣うことはあっても、仲良しになる必要はないんですよね。
要するに、すべての上司・同僚が納得いくような立ち回りをするのは不可能ということです。まして、メンタルを病んで休職していたんですから、そんなことまで気を回していたら100%再発します。
迷惑の基準は人それぞれなので、まずは「できるだけ多くの人が納得しそうな着地点」を探すだけで十分かと思います。
「復職した人がわがまま!」と思われないコツ
とはいえ、できれば穏便に復職して、お互いにぎくしゃくしないで働けるようにしたいですよね。
ここでは、「わがままばっかり!」と思われないコツを紹介します。
挨拶だけはきちんとする
新入社員みたいですが、これって本当に大事です。
「おはようございます」「ありがとうございます」「お先に失礼します」の3点だけでもきちんと言うだけで大丈夫。まずは職場の環境になかにいる自分を感じましょう。
長らく自宅周りだけで生きてきた自分にとっても、人にきちんと挨拶することで「社会に戻ってきた」という感覚が戻ってきます。
無理やり笑ったり、全員のところを回る必要はありません。コミュニケーションの扉を自分から開けておく程度のイメージでやってみてください。
普通に、休職中って人と話す機会が少なすぎて、いざ話そうとすると声がカスカスになっていることもあります(笑)。リハビリのつもりで、無理のない程度に声を出しましょう。
もらった仕事は今まで以上に丁寧にやる
業務内容に配慮してもらっているうちは、実際にできる仕事が限られています。そのなかで振り分けてもらえた仕事は、丁寧にきちんとこなせるように心がけましょう。
最初は久しぶりすぎてうまくいかないかもしれません。ただ、そこで投げ出すと「わがまま」「えり好みしていて話にならない」と思われてしまう可能性もあります。
ここで大事なのが、仕事に関して分からないことがあったら誰かに聞いてみることです。むしろ、誰かに「これのやり方って、前と変わったところはありませんか?」と質問してみるとよいでしょう。
周りの人からすると、プライベートな話題は話しにくいはず。どうしても休職中の話になっちゃいますからね。
一方で、業務に関することならフラットに話せるため、会話のハードルもぐっと下がります。今の職場に馴染もうとする努力にも見えるため、警戒していた同僚の緊張を和らげることにもつながるのでおすすめです。
教えてもらったら、前述のように「ありがとう」の言葉をきちんと伝えます。その積み重ねでお互いの気まずさが徐々に解消され、いずれ気兼ねなく働ける環境に変わっていきますよ。
安請け合いしすぎない
とはいえ、とにかく馴染もうとして、何でもかんでも気安く引き受けないことも大事です。
職場の同僚だけでなく、復職した自分自身ですら勘違いしがちなのが「復職したからといって元通りに治ったわけではない」ということ。残念ながら、休職しなければならないほどメンタルを崩してしまったら、完全に元通りにはならないということを知っておかなければなりません。
私自身も、復職して仕事を続けていれば、いつかは元通りに働けると思っていました。でも、適応障害になった環境や業務量と同じになれば、再発する可能性がかなり高くなります。

安請け合いして「何とかしよう!」とやってみたものの、上手くいかずに結局迷惑をかけてしまう→それに自分も落ち込んで余計にメンタルが傷つく→再発へまっしぐら…という悪循環になりかねないので、受ける仕事はきちんと考えた方がいいかもしれません。
私は復職するにあたって、メンタルを守れる仕事のやり方5か条を作って続けていました。
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ワーママが適応障害から復職して作った「鉄の掟」5か条
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まぁ、これをやっても結局復職して1年で再発し、そのまま休職→退職したわけですが、自分の働き方を見直す良いきっかけになりました。今でもそれが活きているので、人生にとって実りある発見になりましたよ。
職場にとって「最大の迷惑」とは?
これは元患者の経験から考えた推測ですが、職場にとって最も迷惑なことは「復職と休職を繰り返す」ことなのではないかと思います。
特に、短期間で繰り返すと職場全体がバタつくので、全体のパフォーマンスそのものが落ちる可能性も否定できません。
また、休職するとなると関係各所に書類を出す必要があり、直属の上司や総務など多方面のスタッフに業務とは関係ない作業が発生します。復職時も同じなのですね。
したがって、休職と復職を短期間で繰り返すと「いい加減にしてくれ!」とネガティブな印象をもたれる可能性も非常に高いです。
休職と復職を繰り返さないためには、それなりに準備が必要でしょう。まずは休職中はクリニックの医師や臨床心理士さんとよく相談して、メンタルや体の回復に努めるのが大切です。
休職中の過ごし方ってとても大事で、適切に過ごすことで心も体も整っていきます。さらに、休職したことで急落した自己肯定感を取り戻すことも大事なので、休職中は自分のことを第一に生活しましょう。
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適応障害で休職中の過ごし方 カウンセリング金言から考えてみる
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思い切って環境を変えることも選択肢に
ただ、どんなに自分が努力しても、協力してくれる上司や同僚に恵まれても、一部の方は何が何でも「迷惑だ」と譲らない方もいます。こればっかりは仕方ないですが、復職する側としたら辛いですよね。
世の中努力次第でどうにかなることばかりではないものです。特に、人間関係がもとで適応障害になったケースならなおさらですよね。人との関係がうまく結べない、結んでも裏切られたと思うような体験があったら、修復するのに大変な努力と時間が必要です。
どうしてもつらくてまた体に異常が出始めたり、あまりに無力感がぬぐえなかったりする場合は、無理にしがみつかなくてもいいと思います。傷病手当金などの制度を総務課に確認して退職するのもありでしょう。
私自身も数年間は「有給休暇→傷病休暇→休職(傷病手当金あり)→退職(傷病手当金は継続)」といった流れで、制度をフル活用して生活していました。
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適応障害になった私のリアルなお金の流れ【有休~傷病手当金受給まで】
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当面お金の心配が軽減されることで、その後の仕事や生活について落ち着いて考えられたのが良かったです。
「もう無理だ」と思ってしまったら、さっぱり違う環境に身を置くのもひとつの手段。私は傷病手当金があるうちにWEBライターの仕事を始め、ライター業の基礎を固めた上で個人事業主として独立しました。
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WEBライターは適応障害持ちに合ってる?元患者&現役ライターが解説
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現在は学校給食のパートと並行して、自分が本当にやりたい仕事だけを選んで働いています。適応障害になる前の、バリバリ働いてキャリアを積んでいた頃も楽しかったですが、今の働き方も無理なく自分に馴染んでいるので、結果として良かったと思っています。
まとめ
職場に迷惑だと思われてしまうのは、配慮されるのが当然だと思っていたり、お互いに気を遣い過ぎて精神的に消耗させてしまったりすることが原因かもしれません。しっかり挨拶をする、無理のない業務を引き受けて確実に完了させるなど、小さな努力の積み重ねが大切です。
ただ、どんなに頑張っても認めてくれない方は一定数います。再び自分の限界が来てしまう前に、傷病手当金などの制度に頼るほか、思い切って転職するなど働く環境を変えるのもおすすめです。大事なのは自分自身であることを忘れないでくださいね。